■名作列伝010

超電磁劇団ラニョミリ・第10発目公演

算数ドリル


日時:2005年11月12・13日

場所:相鉄本多劇場



カネダトモカズは小学校3年生。


2年生の2学期から4期連続で学級委員長を務めてきたクラスの実力者である。


放課後のお好み焼き屋での饗応、保健係や体育係などの人気ポストを裏取引で自派閥の人間に割り振るなどの手を駆使して磐石な政権基盤を築いていた彼は、今回もあらゆる手を尽くして当選に向けて着々と根回しを進めていた。


そして立候補演説会の日。来年進級して高学年となることの不安を煽り、運動会等のイベントでの優勝を公約、そして自らの実績を強調、最後は情に訴えるカネダの演説は、クラスの有権者の心を掌握するのに十分なものであった。


もはやカネダ勝利か、そう思われた中、一人の児童が異議を申し出た。ミツオである。


不登校児だったミツオは、カネダが自らの最大の実績であると強調した飼育係ローテーション制度の運用が滞っていることを指摘し、更には遠足の班決めの際にも派閥を利用した不正が行われていたことも暴露した。


ミツオの追求に対ししどろもどろになるカネダ。助けを求めた腹心のイマイとベンタローにも「記憶にございません」とシラを切られてしまい、一気に形勢不利に追い込まれてしまった。


そしてミツオが、カネダに引導を渡すべく再び担任教師の北野に発言を求めた。


「カネダトモカズ君の、派閥に捉われ、癒着が横行し、談合を重ねる腐敗しきった理念では…」。


北野を後ろ盾に、有権者にカネダ政権の腐敗ぶりを訴えるミツオ。そしてついにミツオがその真の目的を語った。


「学級委員長として、キムラジュンコ様を推薦したいと思います!」。


転校生で目立たない存在であったはずのキムラが北野と共謀し、ミツオを抱きこんで着々と出馬へ向けて準備を進めていたのである。

北野とミツオに促され、演台に上がるキムラ。


キムラはミツオの発言を引き継ぐように次々とカネダの不正ぶりを暴露し、カネダ政権を「利権集中」、「利益誘導型」と断罪、そしてクリーンなクラス作りを掲げて堂々と立候補を宣言した。


ミツオを推薦人としてキムラを委員長の座に就けることによっていじめ問題の解決と学級融和を一気に成し遂げる。


これが北野の真の目的だったのである。クラス中からキムラに浴びせられる嵐のような拍手の中、カネダは自らが罠に嵌められたことを知り、怒りを露わにするのだった…。

放課後。カネダは再びイマイとベンタローと対応を協議していた。

カネダ支持であった4班班長のタカオがキムラ支持に回り、更に状況は不利になりつつあるカネダ陣営。

主戦論を主張するカネダに対し、ついにベンタローから選挙戦からの撤退が提案される。


弱腰のベンタローに対し怒りをぶつけるカネダ。議論は平行線をたどり、ついに決裂。

ベンタローはカネダ派から離脱してしまう。頼れるものはイマイのみとなってしまったカネダ。


しかしイマイも勝ち目のなくなったカネダに見切りをつけ、派閥離脱を宣言。

キムラ支持へと回ってしまった。カネダ内閣崩壊。全てを失ったカネダは悲嘆にくれるばかりであった…。


カネダの足は、自然とウサギ小屋に向かっていた。


飼育係のローテーションが崩壊して以来、彼は人知れずウサギの世話を続けていたのだ。


ウサギに語りかけるかのように自らの不遇を嘆くカネダ。そこへ一人の男が現れた。


クラスのアウトロー・ヤマオカである。貧しい家計を支えるために働き、めったに学校へも来ないヤマオカにしてみれば、一番大事なことは一人一人が自立することであって、民主主義などは二の次なのであった。


すっかり意欲を失ってしまったカネダに対し、「それでいいのか?」と問い詰め、再起を求めるヤマオカ。


「何故だ…、何故そんなに俺に肩入れする?」「ウサギを大切に思う人間に悪い人間はいないからだ」。


見詰め合う二人、芽生える友情。そして地獄の特訓が幕を開ける…。


カネダは果たして再起を期すことができるのか?それぞれの思惑と野望が渦巻く中、運命の投票日に向けて、嵐の選挙戦が展開される…。