■名作列伝014

超電磁劇団ラニョミリINTERNATIONAL・第14回公演

国防2010 タモガミ★アーミーカンパニー

~ジャニーズ帝國の逆襲~

 

日時:2010年7月17日~7月19日

場所:相鉄本多劇場

 


増え続ける財政赤字、多発する国際紛争とそれに伴うアメリカからの軍事的貢献の要求。政権を悩ませる二つの問題を解決するため、時の政府は自衛隊の民営化を決定。複数の自衛隊企業が受注を争う過当競争の時代に突入した。しかし、自衛隊民営化と時を同じくして世界各地の紛争が終結。「仕事」を失った自衛隊企業は、自社の女性自衛官を「アイドル自衛官」として売り出すことによって生き残りを図った-。

そして2010年。零細自衛隊企業「タモガミアーミーカンパニー(TAC)」では、隊員たちが実戦訓練に励んでいた。だが、経営が危ぶまれるTACには訓練で実弾を使う余裕はなく、口マネで銃撃戦をする有様。戦闘機や戦車も経営が苦しくなるたびに売却しまい、優秀な人材も次々と他社へ移った結果、今やTACには隊長の小松と唯一のベテランである宇都宮の他、自称戦場カメラマンのカメラオタクの伊丹、パート主婦の朝霞、アルバイトで軍事オタクの守山と、実に頼りない面々ばかりとなってしまっていた。 今日も口マネの実戦訓練で守山が上官である宇都宮に「当たったんだから死んでくださいよ」と食ってかかる始末。見るに見かねた小松は訓練を中断し、休憩を宣言した。一気に緩む訓練場の空気。とそこに、一人の女性が現れた。アニメのコスプレ姿という自衛隊には全くふさわしくない姿で現れた彼女に対し、隊員たちはただただ唖然とするばかり。「今日からこちらでお世話になることになりました三沢千歳です」と名乗った彼女、実は社長が直接スカウトしてきたアイドル自衛官候補だったのだ。扱いに困った小松はとりあえず三沢を体験入隊として訓練に参加させようとするも、三沢は「アイドル自衛官って歌と踊りだけで実戦は全部スタントの人がやってくれるって…」と全く訓練に参加する気を見せようとしない。

呆れ果てる小松に追い打ちをかけるように更なる頭痛の種が現れた。経理の春日である。この状況を「サボり」と言い切った春日は、小松を始めとする隊員たちに「大体あなたたち、自分の仕事を何だと思っているんですか」と、自衛官としての気概を説きはじめた。しかし、経理としての春日の「企業の論理」と実際に命がけで戦ってきた小松の「軍人の論理」が相容れるわけはなく、二人の間に険悪な雰囲気が漂う。 その空気を断ち切るかのように春日が小松に出動依頼書を突きつけた。依頼主は日本政府。久し振りの超優良顧客からの依頼である。そして相手は何と、ジャニーズ事務所。「美少年王国」建国のためにテロ攻撃の準備をしているというジャニーズ事務所に潜入してテロ攻撃の確たる証拠を掴むこと、これが今回の任務である。 あまりにも突拍子のない任務に「そんなアホな」と半信半疑な隊員たち。そんな彼らを春日は「アホでも何でも仕事は仕事です」と一喝し、作戦行動の開始を宣言したのだった。

場面は変わってある山の中。ジャニーズ事務所の訓練場を目指すTACの隊員たちが野営をしていた。飯盒を囲んでカレーを食べる様はまさにキャンプのそれで、戦場の緊張感とは程遠いのどかな雰囲気が漂っていた。 しかし、一人で警戒態勢をとっていた宇都宮が異変に気づいた。「何かが来ます」。迫りくる敵兵の姿に身を隠す一同。一触即発の危機に緊張感が高まる中、恐怖に耐え切れなくなった三沢が銃を乱射してしまった。応戦する敵に対して小松の号令の元、戦闘に突入する隊員たち。暗視スコープを使い正確に攻撃してくる敵に対し、敵の見えないTACは防戦一方。明らかに戦況が不利な中、三沢が敵の銃撃を受けてしまった。絶体絶命のピンチではあったが、辛うじて敵の撃退に成功するTAC部隊。幸い三沢の傷も大したことなく、安堵の空気が流れる。だが、そんな彼らに忍び寄る一つの影があった。先ほどの敵兵の生き残りが突如現れて銃を乱射したのだ。突然の奇襲に応戦の態勢すら取れない中、とっさに動いたのは宇都宮だった。敵の懐に入り込んで至近距離で拳銃を撃ち、さらにナイフでとどめを刺す宇都宮。彼の行動は軍人として正しいものではあったが、実戦経験のない隊員たちに戦争の現実を突きつけることとなった。 

 隊員たちの目の前に転がる敵兵の死体。それこそがまさに「戦争の現実」なのだ。

いきなり突きつけられた現実に戸惑う隊員たち。そんな彼らに対して宇都宮は「戦争というのはこういうものです」と冷静に言い切り、移動を促す。だが、目の前の状況に耐えられずに泣きじゃくる三沢は「もう家に帰りたい…」と言ってその場を動こうとしなかった。  「彼女は無理です。置いていきましょう」。冷たく言い放つ宇都宮とそれに同調する春日。そしてそれを受け入れられない朝霞と守山。双方から迫られた小松が下した決断は-作戦の中止。契約不履行となることを恐れた春日は業務命令として小松に作戦の続行を命じるが、小松は「味方を見捨てるような会社、こっちから願い下げだ」と撤退を命令。しかし、撤退しようとする小松の前に、銃を構えた宇都宮が立ちはだかるのだった。


「敵前逃亡は銃殺刑ですよ、いくら隊長であってもね」


上官に銃を向けてまで作戦を続行しようとする宇都宮の真意とは?そしてこの「戦争」の果てに隊員たちは何を見るのか。生と死の狭間で、今、最後の銃声が響く…。


撮影 駒ヶ嶺正人