■名作列伝015

超電磁劇団ラニョミリINTERNATIONAL・第15回公演

熱海殺人事件

~木村伝兵衛部長刑事の初級革命講座飛龍伝2011~


日時:2011年10月28日~30日

場所:相鉄本多劇場



舞台は警視庁の部長刑事木村伝兵衛の捜査室である。熱海で起こった殺人事件の捜査のために富山県警から転任してきた熊田留吉刑事が到着し、部長刑事の部下の女性刑事片桐はな子が登場するところから芝居ははじまる。熱海でブスな女工を殺害した田舎者の工員をどこに出しても恥ずかしくない立派な犯人に仕立て上げるための悪戦苦闘が芝居のストーリーを形成する。

 オーソドックスに捜査を進めようとする熊田刑事に対し、部長刑事と女性刑事は一見非常識ともとれる発言を繰り返す、犯行の動機を探ろうとする熊田に対しては「動機なんか豚に食われろ」、死体発見者については「私好みの発見者にしてほしい」など。自分たちのイメージする事件に作り上げることが彼らの目標なのである。

 容疑者大山金太郎が登場して捜査は本格化する。そもそも事件は工員大山金太郎が、女工山口アイ子と海を見に行ったことに発している。海を見に行く理由をアイ子が「海を見たい」と言ったからだ、とする大山に対して、刑事たちは工員と女工が酒も飲まずに海を見に行けるわけがない、という理由で、喫茶店で待ち合わせた、という大山の供述をスナックに変更させようとする。また、山口アイ子がブスであることにこだわり、ブスだから殺した、という方向に事件のストーリーを作ろうとする。が、その方向づけにうまく合わせようとしない大山に対して刑事たちは飽きてしまい、大山一人を捜査室に残して帰ってしまう。

 捜査室に一人残された大山が力尽きようとしたとき、再び刑事たちが捜査室に戻り、捜査は再開される。そして女性刑事が山口アイ子に扮する劇中劇を通して、二人の葛藤が明らかにされる。大山がアイ子を殺したのは、自分の「誠実さ」が踏みにじられたからであり、大山が唯一のよすがにした村での大相撲の一番を「忘れたわ」と片付けられたことにあった。しかし、アイ子にはアイ子の言い分があった。大山の「田舎くささ」が許せなかったのである。だがそれ以上にイヤだったのは、「自分が工員だから」という大山の劣等意識であった。「油臭い工員だから嫌なんだろう」という大山の卑屈さがアイ子には我慢がならなかったのである。 大山の自白に対して、刑事たちは大山を「立派な」犯人として認め、自らの犯罪にたいして自覚をもった大山の「実り多き前途」を祝す中、物語は終わっていく。

撮影 駒ヶ嶺正人